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5.糖質制限食と代謝障害の可能性について
(留意点の提起)
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(1)糖質制限食の留意点
私が糖質制限食を始めたのは2013年6月からで済陽式食事療法に日本人の1日の平均糖質摂取量300gの半分の150g/日からでした。これを2015年6月まで2年間続け、そこから3か月かけて1日30g前後の糖質摂取量のケトン体食事法にし、2016年7月まで約1年間続けてきました。
体調も順調で、仕事も1日8時間前後バリバリしており、マーカーもほぼゼロにコントロールされており、今年の11月で75歳になりますが、頭脳も明晰に活動していて、特に問題を感じていません。
しかし、今私はK.F先生の研究プロジェクトに被験者として参加しており、その血液検査の推移の中で、他のメンバーにないたんぱく質と脂質の基準値外の数値の逸脱が目立ってきていて、特殊な糖質制限という食事の偏りにより、代謝系に問題があるのではないかとのK.F先生の心配のコメントを頂きました。
私個人の事でしたら、特に公表することでもないのですが、この2年間このメーリングで繰り返し繰り返し、糖質制限のがんに対する利点を述べてきた責任もあり、私と同じように糖質制限を深化している方がもしおられれば、情報を共有する必要があると思い、留意すべきことかどうかの判断も含めて検討したいと思い、急遽この章を設けました。
ただし詳しい内容は先生のプロジェクトに属するものですから、私自身のデータであっても私の判断でこれを公表することはできないので、定性的な情報の提供になるかと思いますが、このようなこともあるかもしれないという留意点の喚起だけはしておきたいと思います。
そして、このケトン体食事法(この1年血中ケトン体はほぼ1000μmol/Lを検出)に関しての私の立場は先の「4. ランチの会の食事法とケトン体食事法の融合は可能か」の最後の方で私はこう述べています。
「私としては、何が起きるかわからない手探りの状態なので、積極的に人にすすめることには躊躇しています。」と記述していますが、今までランチの会の皆様に糖質制限のがんに対する有効性のみを述べてきた私としては、代謝障害の可能性の指摘を受けて、糖質制限をするとどんなマイナスの現象が起こるのか、どういうことに注意した方がいいのかをも調べ、記述しなければ片手落ちで、場合によっては悪い結果を招くこともあるので、ここで可能な限り調べ、対比し整理したいと思います。
私の基本的立場としては、糖質制限でがんと立ち向かう意思に変わりはありませんが、目の前にある血液のデータに対しては専門家ではないですが、かって理学と工学の世界に身を置いた者として、データが全ての世界に生きてきた人間としては、しっかりとデータを尊重して、その意味するところを知りたいと思っています。
(1) 代謝異常の原因は?
通常の血液検査では現れない複数の血液中のたんぱく質と脂質の分画検査でかなりの数の成分の下限値を下回ったり、上回ったりしており、この原因が極端な糖質制限による代謝系の乱れから起こっており、エネルギーを産生する最も効率的で細胞にやさしいブドウ糖からのエネルギー生産がストップし、たんぱく質や脂肪を燃やして得るエネルギーで、その産生工程において細胞に余計な負担をかけると同時に体を構成するたんぱく質や脂質をエネルギーに変えてしまっておりそこに体を構成する成分のアンバランスが起きているのではないかというのが私の解釈です。
詳しい医学的なメカニズムについてはK.F先生からコメントを頂けるかどうかはわかりませんが、とりあえず糖質制限をするとこういうことも起きるということも知っておいてほしいので、あえて私の事例をまだ早すぎるかもしれませんが、公表しておきます。 原因として考えられることを以下に記しておきます。
① 私の年齢が高く,もともと消化吸収能力が衰えていて、代謝系にも無理がかけられない歳になっていた。
② 糖質を制限してそれに代わるエネルギーの補充分が足りず体のストックを使い始めていた。
③ 私の摂っている食材に偏りがあり、それが影響している可能性がある。
④ 糖質制限をされている方が全て私のようになっているとは私は考えていませんが、高齢な方で同じような事例が今後起こる可能性は否定できないと思います。
(2) 対策
原因が絞り込めなければ対策は立てられませんが、糖質制限は私にとっては目的ではなく手段ですから、こういう事態になればとりあえず少し緩めて、1日70~100gの糖質制限に緩和し、次回の検査でどの程度変化があるかどうかを見てみたいと思っています。
糖質制限食に対する賛否の論争はいまだに続いており、決着はつきそうにもありません。たくさんの医師の糖質制限の事例が先行し、世に紹介されていて、長期的な医学的エビデンスがないということが私たちに不安を与えているのが現実です。
それではなぜ私が糖質制限を実際に行ない、それをメーリングで問題提起をしたかという根拠は、ハーバート大学のフォング博士らが糖質制限を行い動物性食事をしている人のは死亡率は一般的な食事をしている人に比べて23%も上昇するが一方、糖質制限をしながら、植物性たんぱく質の多い食事をしている人の死亡率は20%低下するという研究とそのほかの同じような研究に触発され、なおかつ「がんと糖分の大いなる関係」を考慮すると、がんとの共存のためには糖質制限食が優位であると私としては結論し実践してきました。
そしてメキシコのゴンザレス総合病院のフリゴレット博士らの総説論文(レビュー)にある「糖質制限・愛するのか憎むのか」にある「糖質制限の概念を定義し、栄養学・医学の専門家の意見の概説として、長期と短期の臨床的な効果についての説明と代謝におよぼす影響について解説を試み、最終的には糖質制限の研究上で認められる差異を明らかにすることで、その実際上の運用のコンセンサスを得たい」(岡本卓著 本当は怖い「糖質制限」より) という結びこそ私たち患者が欲しい情報です。
一方、北里大学の山田悟糖尿病センター長の著書「糖質制限の真実」(幻冬舎新書)によると、日本でも世界でも大規模疫学調査により、エビデンスレベル1のランダム比較試験でもレベル2の観察研究でも糖質制限の有効性が示されたとしています。
この辺が私たち患者が糖質制限をすることを始める時に、その中身をしっかり勉強しなければならないところだと思います。そして先のゴンザレス病院のフリゴレット医師のいう「長期と短期の臨床的な効果についての説明と代謝におよぼす影響」をぜひ世界的規模で解明して頂きたいと切に思います。
そして、K.F先生のおっしゃるブドウ糖によるATP産生が細胞にとって効率が良く、細胞に優しいエネルギー代謝で、特に心臓に対しては脂肪酸からのエネルギー産生は心臓に負担が大きく、糖質制限は賛成できない旨のお話しを何回か伺っていますのでこの辺のこともこれから勉強したいと思っています。
また、山田医師によると血中のケトン体が1000μmol/L以下であれば、悪影響がないと言い切っていますが、これも話だけで裏づけのある観察又は実験データの提示がないので、どこまでの条件なら安全なのか判断基準が分かりません。
そして、先の糖質制限食に関するエビデンスレベル1もレベル2の検証試験は糖尿病治療に関するものなので、多少はわれわれがん患者に参考になるとはいえ、厳密には推奨される食材、又は禁止に近い食材に違いがあるため、代謝に対する影響には大きな差異があることは明白です。そういうわけですから、糖質制限食のがん細胞に対する抗ガン作用が大であることは、たくさんの論文、書籍で確信できるのですが、食材の偏りによるエネルギー産生の性質が変わることによる代謝への影響が、統計的、疫学的に解明されることが本当に欲しい。私個人でやったところで、単なるたった一つの事例でしかないので、ほとんど世の役に立つとは思えません。
今日は2016年8月5日です。上記の件で窓辺のソファーに座って、空をぼんやりと眺めていたら、そうだ血液の基準値って何なんだろう、どうやって決めたんだろう、私のたんぱく質と脂質の分画検査でたくさんの成分の値がそれぞれの基準値からはみ出してきていて、それが異常だ、危険だというわけだけれど、そもそも基準値とは1000人なら1000人のうちの90%の人が入る値を基準値として採用しているのではないかと推察されますね。その1000人の人は多分990人は1日350gぐらいの糖質を摂っているとしたら、その条件での基準値になっているわけなので、それでは果たして、1日糖質350g前後の糖質摂取が健康に最適で糖質が100g以下なら不健康だという前提で組み立てられた基準値ではないだろうか。
だから、炭水化物20%、たんぱく質20%、脂質60%での食事人間の集団での基準値は異なるはずだ。こんなことを考えていたら、雲が魚や鶏卵に見えてきました。医学・栄養学の専門家から見たらとんでもない見方でナンセンスだと一蹴されると思いますがいかがでしょうか。この辺のことももう少し調べて考えてみたいと思います。