(3) 活性酸素を除去するスカベンジャー(掃除人) )
以下の内容は増成吉成理学博士の著書「活性酸素を減らせばガンも老化も防げる」主婦の友社1994年刊によるところが多いです。
よく言われるスカベンジャーとは英語で掃除人又は廃品回収業者の事をいいますが、ここでは活性酸素から私達の体を守ってくれる物質という意味です。その主な役割は病気の原因の9割を占めると言われる活性酸素の無毒化です。
主な活性酸素は発生順に言うと①スーパーオキサイドラジカル,②過酸化水素③一重項酸素そして最後に最強にして最も悪玉のハイドロキシルラジカルがあります。その他にもありますが、省略します。
スーパーオキサイドラジカルはミトコンドリアでエネルギーがつくられる段階で一番最初に大量発生する活性酸素です。常に発生している活性酸素ですから、発生と同時に無毒化しなければなりません。そこでこの活性酸素を消去する最強のスカベンジャーSOD(スーパーオキサイドディスムターゼ)なる物質が細胞およびミトコンドリアの中で大量に産生されます。1秒間に10億個という速さでスーパーオキサイドラジカルを酸素と比較的害の少ない過酸化水素に変えていきます。通常の変化の速さの1万倍の速さで過酸化水素に変えていきます。
1個のSODが数千の活性酸素を無毒化していきます。一方ビタミンCは1対1の関係で消去していきますので如何にSODが頼もしいかわかりますね。
とは言え、スーパーオキサイドラジカルは細胞内で正確には細胞内のミトコンドリアでエネルギーが産生されるたびに酸素の2パーセントとはいえ膨大な数のスーパーオキサイドラジカルが次から次へと発生してきます。これに対してSODの大群がこれを迎え撃って無害化しても(酸素と過酸化水素に変える)、かなりの数が残り、変えられた過酸化水素も活性酸素としての働きがあり、かなり曲者です。
過酸化水素は透過性に富み細胞膜をすり抜け、細胞内で鉄や銅イオンと結びついて、最強の活性酸素ハイドロキシルラジカルに変身します。ですからこの段階で徹底的に過酸化水素を消去する必要があり、防御軍はグルタチオンベルオキシターゼとカタラーゼの二つの酵素とそれにビタミンCです。カタラーゼは血液の中に多く含まれている酵素で一個のカタラーゼ分子は過酸化水素を1秒間に九万個も酸素と水に変える能力を持っています。
それでも足りないことも考えて、私は大量のビタミンCを体外から補給することも必要と思い、今では1日20gのビタミンCを1日中たゆまなく補給を続けています。
それでも処理しきれないスーパーオキサイドラジカルや過酸化水素は引き続き化学変化をしながらハイドロキシルラジカルや一重項酸素のより強い活性酸素を発生させ続けます。
しかもハイドロキシルラジカルは私たちの体内で作られる酵素だけでは除去できません。そのため外部から食物として取り入れるビタミンミネラルやファイトケミカルが主にこの二つの活性酸素の除去に活躍することになります。特にハイドロキシルラジカルに対しては天然ビタミンEがスカベンジャーとして大活躍をします。
ビタミンではA (前駆体のカロテンとして摂取)、C,E のACE (エース) を中心にB2も含めて活性酸素の除去に活躍します。がん患者は健康人よりより多くの活性酸素が産生されていますから、ビタミン、ファイトケミカルをかなり多めに摂らないと間に合いません。
そして、もう一つ大切な事があります。それはSODにしてもほかの酵素群にしてもその核心部分はたんぱく質です。それも出来ればプロテインスコア100又は100に近い良質なたんぱく質を体重の0.1%~0.15%(60 ㎏の人なら60g~90g/日)必要だと言われています。(私の場合、たんぱく質の体重の0.15%は週に1日ぐらいです。)
プロテインスコア100のたんぱく質と言えば鶏卵ですね。私は1日2個から3個食べています。コレステロールは増えていません。
鶏のささみ、胸肉もココナツオイルで美味しく炒めて、週に2から3回食しています。済陽式食事法を前立腺がん告知された日から1年半は修行僧のごとく厳格に守り抜き、マーカー値をほぼゼロにして、CT撮影でもMRI撮影でもがんの影が全くない事を確認しつつ、 糖質の摂取量を1日30gから80gに制限することによってがんのえさになる糖分を極力減らし、動物性たんぱく質の摂取とのバランスを取っています。
この考え方が私にとっていいのか悪いのかは後3~5年続けてみないと何とも言えません。
さらにもう一つ大切なのがミネラル類です。体内でSOD、グルタチオンベルオキシターゼ、カタラーゼなどの活性酸素除去酵素を作る際に助酵素として働くのが、マンガン、亜鉛、銅、セレニウム、鉄などのミネラル類です。これらのミネラル類がなければ私たちの体はスカベンジャー酵素を作ることができなくなります。この5種類のミネラルは絶対に不足しないようにできればサプリメントを上手に使って過不足ないようにコントロールすべきものだと思います。
そして、がんになってしまった自分としては、ファイトケミカルの力もより以上に頼りたい。色とりどりの野菜や果物、海藻に含まれるフラボノイド、ポリフェノール、含流化合物,カロテノイド、糖関連物質、アミノ酸類、香気成分などをふんだんに意識して摂取するようにしている。
ファイトケミカルの抗酸化作用、免疫力増強作用、抗がん作用については次の(4)ファイトケミカルの力で詳しく書きます。そして、もう一つの活性酸素(特に一重項酸素、ハイドロキシルラジカル)を瞬時に水にしてしまう水素の活用についても(5)水素の力で書く予定です。
最後にもう一度活性酸素の発生と迎え撃つ酵素群、そしてこの酵素群を活性化するために絶対的に必要な諸栄養素とそれらの量の目安を述べ、酵素群では手に負えない一重項酸素、ハイドロキシルラジカルを消し去るための外部からの援軍のまとめを述べたいと思います。
活性酸素は日常生活の中で夜眠っているときでも四六時中呼吸し、エネルギーを産生し、消化活動をし、解毒作用も行い、その他諸々の生理活動をしていれば必ず次から次へと大量に活性酸素を作り出し続けます。しかし太古の昔から生物は気の遠くなる時間の中で、活性酸素に対抗するシステムを作り上げてきました。それがSOD、グルタチオンベルオキシターゼ、カタラーゼなどの抗酸化酵素です。
これらの抗酸化酵素も25歳を境に加齢とともに減少していきます。それでも減少していく酵素に踏みとどまって活躍してもらうためには、先にも述べたように核となる良質のたんぱく質を十二分に摂取し、その活動を活性化するためのマンガン、亜鉛、銅、セレニウム、鉄を過不足なくとることが必要です。
ここでは私はサプリメントで調整しています。そして最初に発生するスーパーオキサイドラジカルと過酸化水素はこれらの酵素で無害化されますが、100パーセントではありません。
残った活性酸素スーパーオキサイドラジカルと過酸化水素が化学反応をしてよりたちの悪い一重項酸素、ハイドロキシルラジカルが次から次へと大量に発生してきます。
これらを迎え撃つのが、ビタミンA(カロテン)、ビタミンE、ビタミンC そして先ほど述べたファイトケミカルと呼ばれる植物特有の抗酸化物質です。ですからこれらを満遍なく摂取することが、がんの進行を遅らせ体力の回復、老化の予防、他の病気の予防につながるのではないでしょうか。
ここで、ビタミンCについては、今までに述べてきたように、がん治療には1日10gを10回以上に分けて摂取することをお勧めしてきました。私自身は1日20gを1回1gに小分けして飲んでいます。
ビタミンEについては国の目安量は7~9mgで上限値は600~800mgになっています。私は天然サプリメントで500mg摂取して、残り300mgは食品からとるようにしています。ビタミンCは天然も合成品も品質や効果には全く相違はありませんが、ビタミンEは必ず天然ものを摂取した方が効果は数倍の差があるとのことです。ビタミンEにはα型、β型、γ型、デルタ型がありますが、本当にスカベンジャーとして有効なのはα型のみで、それも天然もので、商品の表示に≪天然α型トコフェノール」または「d-α-トコフェノール」と書いてあるものがお勧めで、化学合成品には「dℓ-α-トコフェノール」または「酢酸トコフェノール」と表示してあります。
ビタミンCとビタミンEはそれぞれ補完し合いながら活性酸素を消去しています。ビタミンCは水溶性ですから脂質の中の活性酸素には手が届きません。この場合は脂溶性のビタミンEが活躍します。また、活性酸素を還元して、電子を渡してしまったビタミンEにはビタミンCが電子を渡して、ビタミンEを復活させます。
こんなわけで私は20代の若い頃からビタミンCとEはとり続けてきました。もちろん摂取量はビタミンCが1日1~2g、ビタミンEが最高で100mgと今から見れば微々たるものでしたが、食生活も含めて健康的とは言えない生活スタイルでしたが、70歳までがんの発症がなかったこと、70歳でがんが分かった後5年間ほぼマーカーゼロに抑え込んできたこと、血管病の発症もなかったことはこのビタミンCとEがずいぶん貢献したのではないかと思っています。